11月10日説教「たとえ使い果たしても」よりメッセージ要点

説教

ルカによる福音書 19章 12ー13節: イエスは言われた。「ある立派な家柄の人が、王の位を受けて帰るために、遠い国へ旅立つことになった。  そこで彼は、十人の僕を呼んで十ムナの金を渡し、『わたしが帰って来るまで、これで商売をしなさい』と言った。」

  上に挙げたのは、与えられた聖書箇所の一部です。十人の僕に十ムナの金を渡すとありますが、この十人は一人一ムナづつを平等に受け取ったのです。一ムナというのは、現代のお金に換算すると、100万円位と思ってください。そして、このたとえ話の続きを話すと、王様が帰ってきたら、どれだけ商売でもうかったか僕たちに聞くのです。
 一人目は100万円を1000万円まで増やしました。二人目は100万円を500万円に増やしました。といってほめられるのです。でも三人目は、100万円を布に包んでしまっておいて、そのまま100万円をとっておいたのです。すると、王様は三人目の僕をひどくしかられました。4人目から10人目はどれだけ増やせたのか、あるいは、全然増やせずに商売に失敗したのか、たとえ話では触れられていないので、なんともわかりません。 それにしても、このたとえ話で、王様は神様で、僕は私たちのことを言っていると思いますが、神様から私たち一人に平等にいただく一ムナで商売するっていったいどういうことなのでしょう。
  わたしは、先週ある幼稚園の子供たち10人でやってくれた劇を見ていたんです。そのうち一人は、大きな障害を持っている車椅子の子で、舞台の上には上がれないし、また言葉をしゃべることもうまくできない子でした。劇の最初は舞台の下で待っているだけでした。でも最後のクライマックスになって、その子は先生たちが手伝って車椅子ごと舞台の上に上がりました。そして鈴球をひっぱって、「おめでとう。」という垂れ幕が出るという役を演じたのです。私は涙が出てきてしまいました。
 有名なクリスチャンのお医者さんで、105歳まで生きられ、数年前亡くなった、日野原重明先生という方がいましたが、彼はこんなことを書いていました。「もし、平等ということがありうるとすれば、与えられた人生のなかで、与えられた各人の『宝』を最高度に社会のなかで活かす、あるいは社会に還元する機会が、すべての人に与えられている。」と。。。。この言葉を読んだとき、最初は、同意できませんでした。私のいとこで8時間しか生きることができなかった子がいたのです。
 でもよく考えると、この世に生まれてきた一人ひとりの命は、何時間生きられるか、何年生きるか、またどんな才能を持つかは、あるいは障害を持つか、それはひとりひとり違います。でもいろいろな違いはあっても、必ず、人にはこの世での死がおとずれて、その命は最後はお返しすることになるという点で、平等だということに気づかされます。
 そして、どんな命が短命でも長命でも、あるいはどんな才能があろうが障害が与えられようが、その命を社会に生かす機会はあることを、幼稚園の子供たちの劇を見ていてひしひしと感じてきたのです。あの8時間しか生きられなかったいとこも、短時間であってもおじとおばにはたいへんな喜びを与えたのです。また私も、そのいとこが生まれた4時間以内に、小学校3年生でしたが、「ばんざい」という喜びの作文を書いて提出したことも覚えてます。
 イエス様の今日のたとえ話で、一ムナって、ひとりひとりに、私たちに与えられている命だと考えることができるのではないでしょうか。そして、その命、多いに使って社会に生かすように、神様はいっておられるのだと思います。決して布に隠しているのではなく。
  いつか終わる命を、せいいっぱい社会に還元すること、それがたとえ失敗に終わる人生だってあるかもしれないけど、とにかく社会に活かそうとすることが大切だといっておられるように思うのです。
 たとえ話で4人目から10人目はみな使いきって損してしまった人たちだったかもしれません。でも神様は、布にしまっていた人のようには、しかられないと思います。それはイエスさま自身どういうお方だったか考えればわかると思います。ご自分の命を精一杯使われました。でも商売して儲けたわけでも、本を自分で書いたわけでも、芸術作品を残したわけではありません。徹底的にへりくだり、自分を無にして、ひとびとから十字架刑で殺されてしまったのです。でも神は、そのままで終わりにはなさいませんでした。復活の命があったのです。よみがえられたのです。
 お祈りします。天の神様、平等にいただいている命、いただく才能や病、この世に生きる時間は異なっても、いつかはかならず平等に全員が神にお返しする命を、感謝します。神様の御用のために、そして隣人に社会のため、与えられている命が使われるように導いてください。主イエスのお名前によって祈ります。 アーメン。